【法定雇用率】未達成なら企業名が公表される恐れも

こんにちは。サテライトラボ担当の久米川です。
企業には、障害者雇用率制度を守る義務があり、従業員数45.5名以上の企業では、2020年度末までに、法定雇用率2.3%以上を達成する必要があります。もし未達成であれば、納付金を納めるだけでなく、最悪の場合、企業名公表という事態となります。認知度のある会社の人事担当者としては、特に企業名公表は避けたいところでしょう。
今回は、企業名公表になるまでの流れや、その後の影響についてまとめます。

法定雇用率未達成による影響。

1.企業名公表までの流れ

事業主である企業は毎年6月1日現在の、身体・知的・精神障害者の雇用に関する状況を、管轄のハローワークに報告する必要があります。この報告は、「ロクイチ調査」と呼ばれており、全国の状況が集計され、毎年12月頃に発表されます。
法定雇用率が未達成の企業は、その6月1日時点の報告にもとづき、管轄のハローワークから雇入れ計画作成命令が出され、障害者雇用を達成するための2か年の計画書を作成します。その間、ハローワークからの定期的な指導も入ります。

計画1年目の終わり頃に進捗状況を確認され、計画通りに進んでいないと適正実施勧告がなされます。また、特に改善が遅れている企業には、計画期間終了後に9か月間、企業名公表を前提として特別指導が実施されます。そして、最終的に改善が見られないと判断された場合は、企業名が公表されます。

以上をまとめると下記のような流れとなります。

  1. ①障害者雇用状況報告(毎年6月1日)を基準に達成/未達成を判断
  2. ②雇入れ計画(2か年計画)の作成命令
  3. ③管轄ハローワークからの指導(厚労省の直接指導もあり)
  4. ④1年後の進捗次第で雇入れ計画の適正実施勧告
  5. ⑤計画期間終了後9か月間、企業名公表を前提とした特別指導
  6. ⑥企業名の公表

雇入れ計画書を提出しなければならない事態となった企業は、雇用率を達成することが最優先になるため、雇用後の受け入れ体制の整備が不十分になりがちです。そうなると、早期退職につながり、いつまでも雇用率が安定しません。障害者雇用は、義務感による採用ありきの姿勢ではなく、会社の戦力として迎え入れるという姿勢が求められます。

2.企業名が公表されることのリスクとは?

企業名の公表は、基本的に年度末ごろ、厚生労働省のホームページに発表されます。掲載期間は約1年です。インターネット上に情報がおかれるということは、全世界からアクセスできる上、WEBニュース、ブログ、SNSなどに簡単に記事にされる可能性があります。そうなれば、情報を回収することはほぼ不可能になります。
企業側とすれば、さまざまな事情があってのことだとは思いますが、企業の社会的責任が問われる風潮は年々強くなっているので、公表によって悪印象をもたれてしまうのは避けられないでしょう。社会的責任に対して意識の高い企業や就活生も増えてきていると思われるので、取引先や採用活動にも少なからず影響が出るかもしれません。

3.実際の企業名公表

それでは近年の企業名の公表が、実際どのように行われたのかみていきましょう。

平成26年度(企業名公表:8社)

  1. ①雇入れ計画を作成:617社
  2. ②うち雇用状況の改善が特に悪い:84社
  3. ③平成25年に公表猶予:12社

②と③の計96社を対象に、企業名を公表することを前提とした指導が実施されました。その結果、改善が見られなかった8社が企業名を公表されました。

平成26年度 障害者の雇用状況に関する企業名公表(厚生労働省)

平成27年度(企業名公表:なし)

  1. ①雇入れ計画を作成:221社
  2. ②うち雇用状況の改善が特に悪い:35社
  3. ③平成26年度に公表猶予:20社

②と③の計55社を対象に、企業名を公表することを前提とした指導が実施されました。その結果、一定の改善が見られたため、公表する企業はありませんでした。

平成27年度 障害者の雇用状況に関する企業名公表(厚生労働省)

平成28年度(企業名公表:2社)

  1. ①雇入れ計画を作成:452社
  2. ②うち雇用状況の改善が特に悪い:53社
  3. ③平成27年度に公表猶予:3社

②と③の計56社を対象に、企業名を公表することを前提とした指導が実施されました。その結果、改善が見られなかった2社が、企業名を公表されました。

平成28年度 障害者の雇用状況に関する企業名公表(厚生労働省)

平成29年度(企業名公表:なし)

  1. ①雇入れ計画を作成:280社
  2. ②うち雇用状況の改善が特に悪い:21社
  3. ③平成28年度に公表猶予:12社

②と③の計33社を対象に、企業名を公表することを前提とした指導が実施されました。その結果、一定の改善が見られたため、公表する企業はありませんでした。

平成29年度 障害者の雇用状況に関する企業名公表(厚生労働省)

平成30年度(企業名公表:なし)

平成30年度の企業名公表が行われなかったのは、中央省庁の8割にあたる行政機関で、義務化当初から42年にわたり、あわせて3,460人の障害者雇用が水増しされていたことが判明したことがきっかけとなっています。
政府は水増し問題を解消するため、障害者向け国家公務員試験を行いました。民間企業で雇用されていた障害者も、離職して行政に雇われるケースもあり、企業側に悪影響があったとのことで、未達成でも企業名を公表しないという措置が取られました。結果的に、 国等の機関への適正実施勧告の実施についてのみ報告されました。

平成30年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく 国等の機関への適正実施勧告の実施について

令和元年度(企業名公表:なし)

令和元年度も企業名の公表は行われず、国等の機関への適正実施勧告の実施についてのみ報告されました。

令和元年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく国等の機関への適正実施勧告の実施について

4.まとめ

ここ最近は、中央省庁による障害者雇用数水増し問題により企業名公表はストップしていますが、またいつ再開されるかはわかりません。また、今後も法定雇用率はしばらく上がり続けていくでしょう。企業としては、障害者雇用に対する理解を深め、計画的に取り組んでいくことが求められます。

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